ERPの在庫データ移行では、行数をコピーするだけでなく、在庫の意味を引き継ぐ必要があります。対象商品、倉庫、在庫区分、未完了の取引を定め、データごとに業務上の確認責任者を置きましょう。
マスターと開始数量を分ける
商品・単位・倉庫はマスター、入出庫や調整は取引、切替時点の保有量は開始数量です。投入順序を決めずに取り込むと、参照先の不足や残高の二重計上につながります。
項目対応表には、移行元、移行先、変換ルール、担当者、確認方法を記入します。「箱」を基本単位へ変換する場合も、商品ごとの入数を確認します。すべての箱を同じ個数として扱わないでください。
試験移行の前に整えるデータ
- 重複した商品コードを解消し、旧コードとの対応を残す。
- 単位と保管場所の名称を統一する。
- 販売可能、引当済み、保留中の在庫を区別する。
- 廃番でも在庫や未完了注文がある商品を確認する。
- 過去の履歴をどこで、どの範囲まで参照するか決める。
負の数量を見つけても、取込エラーを避けるために無条件で消してはいけません。処理漏れや計上時点の違いを業務担当者と調べ、修正の根拠を記録します。
合計だけでなく内訳を照合する
商品・倉庫・在庫区分ごとに数量を比較します。ロットやシリアル管理が必要なら、その単位まで確認します。評価額の照合は、経理担当者が基準を定めて別途承認してください。
説明用の例では、旧システムのA倉庫に50個、B倉庫に30個あります。新システムのA倉庫へ80個を入れると総数は一致しますが、正しい移行ではありません。照合表、差異一覧、承認記録を残します。
本番切替の順序を決める
- 抽出・変換・取込・照合を通してリハーサルする。
- 切替時刻と停止する業務を決める。
- 最終抽出後に発生した取引を記録する。
- 開始データを取り込み、その後の取引を一度だけ反映する。
- 現場担当者と入荷・引当・出荷・返品を試す。
- 稼働を承認するか、事前に定めた復旧手順へ進む。
復旧計画には、判断責任者、判断期限、新システムで既に登録した取引の扱いが必要です。バックアップがあるだけでは、整合性のある業務再開方法までは決まりません。
稼働前にそろえるもの
承認済みの項目対応表、解消済みの差異、リハーサル結果、連絡先、検収資料を確認します。重要な数量差異が説明できない場合は、範囲を広げる前に原因を調べましょう。